音声と文字のMental Lexicon(心内辞書)
言葉をあやつるために、人間の脳には一種の「辞書」のようなものがそなわっていると考えられます。最近の認知心理学でMental Lexicon(心内辞書)が取り上げられています。この心的辞書は人間が脳に持っている辞書を指します。この辞書は印刷された辞書や電子辞書と意味を解釈する点では似ていますが、検索の方法はまったく違います。音声を聞いて意味を解釈するプロセスは、音素を次々に照合して絞り込んで一意に特定するのではなく、聞いた音の特徴から意味を類推し、同時に自分が予測した意味と合致させます。音が全て聞き取れていなくても音の一部の特徴だけで解釈可能な優れた辞書ですが、まだ実際にはどのようの記憶に保存されるのは解明されていません。

この心の中の辞書は、高校を卒業する頃で、母語の場合に数万語以上が理解できる状態に達しています。大量の単語に、前後の文脈に応じて柔軟に対応できるのですから、脳内の辞書はずいぶんと見事に構成されているようです。この辞書を心内辞書または心的辞書、英語ではMental Lexiconと呼ばれます。

様々な単語認識の実験結果により、視覚情報から直接単語を認識する説、音韻情報を介して間接的に認識する説があり、最近の傾向として、これらを統合したモデルが有力です。また、単語の熟知度が単語認識と深く関わっています。よく使用されている単語ほど認識が容易であるのも特徴です。最近、単語の一部(例えば、漢字の旁や偏、二字熟語の各漢字等)の位置と頻度がどのように単語全体の認識に影響を与えているかも検討されています。これからは世界各国で心内辞書に関する研究は進むものと思われます。

心内辞書は形態は異りますが、以下のように普通の辞書と共通する点も多くあります。通常の辞書には、言葉の書き方、言葉の定義、使用法、そして読み方などの記述があります。心内辞書に関しても同様に考えられています。単語に関する形態情報、音韻情報、統語情報、そして意味情報が貯蔵されている。リスニングのおいては音韻情報を使っています。リーディングの時には形態情報を使います。

音声英語と文字英語は心内辞書は大きく違いますから、多読がリスニングに多大なる貢献すると言う考えは根拠がありません。

心内辞書の使い方は人により違います。英語を聞いて意味を探す場合に一度音韻情報を文字に直し、そして文字から意味を検索する人がいます。ネイティブの一部と第二言語として学習したような場合に多くあります。英語の文字を見て理解するのプロセスと音声を聞いて理解するプロセスを共有できる利点もありますが、音韻情報を文字にする際の間違いとか、余分な処理時間が掛かるため大変効率の悪い辞書となります。英語のリスニングを良くするためにはこの心内辞書の充実が欠かせません。

このリスニングのための心内辞書構築は自分で発音をしていろいろな英語の特徴のある音を作って録音して、聞いてみることも良い方法です。

発音のためにはいかに音の特徴を掴むかが重要ですが、その音の特徴を聞くことがリスニングになります。すると自分の発音が自然な発音に近くなれば、自然な発音が聞き取れる事になります。

普通の辞書の場合、載っていない単語を調べることはできません。音のストリーム理論で言えば、知らない音は聞き取れない事になります。同様に、心内辞書も見出しがなければ、その単語の認識は不可能になります。普通の辞書において見出しは大体の場合読み順で印刷されていますが、心内辞書では意味的な類似度で組織化されていると思われます。形態的に似た言葉や発音が似た言葉がどのように組織化されているかについても研究が行われているが、まだはっきりとした定説はありません。心内辞書を利用して、我々がどのように音声を認識するのでしょうか。

普通の辞書で単語を調べる場合は、単語の形、または発音により探し、辞書にある見出しとマッチングすることで該当の項目を照合して、辞書からその単語に関する情報を得ます。リスニングの場合に心内辞書における単語の認識は、音声という耳で聞いた物理的刺激と辞書にある項目をマッチングさせます。この際には深度優先検索でどんどん選択を絞って結論が導きだされているようです。

このマッチングは音素ベースではなく、音の特徴が記録されています。ストレスやリズムやイントネーション等も重要な音の特徴として見出しとなっているようですが、まだ詳しい事は良く分かっていません。

心的辞書の考え方はある音の特徴を捉えて、単語とか文章を検索しますので発音ができたかどうかの発音履歴は残っているとは考えにくい事になります。発音ができても聞き取れないと言うのはこの心的辞書の検索メカニズムから考えても大変自然な事だと思われます。
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