発音できても聞き取れない
「発音できなければ聞き取れません。それは英語を聞く時は耳から入った音は、音声信号に一端変換され、まず左側頭葉のウェルニッケ野という場所に送られます。しかしその音が言語の音なのか、それともそれ以外の雑音なのかは、このウェルニッケ野単独では判断できません。そこで、耳から送られた信号音は、そのまま脳の運動前野に送られ、耳からの音声信号の問い合わせをして、過去に作ったことがあれば、それは言語音として認識され、作ったことがなければ、雑音としてのウェルニッケ野に送られます。言語音として認められた音は左側頭葉にあるウェルニッケ野に送られ、始めて意味を検索します。」

一見科学的に見えるこれらの説明はPETやfMRIや光トポグラフィを使って脳の動きを調べると科学的に事実でないことが分かります。


既に紹介したように大石晴美氏の「インプットからインテイクへの言語情報処理過程」(英語教育への応用)でリスニングの場合の脳の働きを説明しています。リスニングの場合、話しことばの音は耳から入り、左半球の聴覚野(41野、42野)で処理された後、右利きのほとんどの人では左半球のウェルニッケ野(22野)に送られます。その後、縁上回(40野)や45野経由で40野に送られたりして言葉として理解されます。


多くの被験者英語を聞いて、一度ウェルニッケ野が活性化された後は、縁上回にからワーキングメモリに連結しているのではないかという点では一致していました。ある被験者は、リスニングの方が背景知識を利用していたことから、英文を聞いた時点ですべての内容を推測して、トップダウン処理によって理解してしまったため、縁上回が活性化されなかったと解釈ができました。

文字の音声化と音声の文字化を、リーディング時の聴覚野の働きと、リスニングの際の角回の働きにより推測すると、ある被験者は、リーディングの際文字を音声化し、ある被験者は、文字を音声化、内語化して処理していることが推測できました。角回が働くのは、文字情報が内語化された時働く箇所だとすれば、リスニングの時、音声を文字化してさらにそれを、被験者が内語化して音声として処理しているのではないかとも推測もできます。

リスニングの時、音声を聞いているのにもかかわらず、すでに背景知識などから、トップダウン処理が働き理解できてしまう場合には、聴覚野が働かず、ウェルニッケ野のみ働いたり、ウェルニッケ野と聴覚野、角回が同時に働いたりしていました。しかしリーディングの時、文字の音韻符号化のため、つまり、頭に入れる前に心の中で反芻するため聴覚野や角回が働いたであろうと推測される場合もみられました。


聞き取りで運動野が活性化しないと言う事は、聞き取りと発音の履歴は関係ないと言う事です。

酒井氏はマサチューセッツ工科大学・言語哲学科と私の研究室の合同プロジェクト「文法処理の脳機構」で文法を使ってことばを理解するときに働く脳の部分をfMRIによって明らかにしました。実験では、英語を母語とする被験者に、英語の文を視覚的に提示して、文法的な語順の間違いがいくつあるかを判断させました。次に、全く同じ英語の文を用いて、スペリングの間違いがいくつあるかを判断してもらいました。この実験の新しい点は、文の語順の間違いを見つける文法条件と、文の綴りの間違いを見つけるスペリング条件とを比較することで、単に何かの間違いを見つける処理ではなく、文法的な判断にかかわるプロセスを明らかにしたことである。

文法条件とスペリング条件では全く同じ文を使っているので、言語野の活動の差は、文法の間違いを見つけるメカニズムを表していると結論できます。この課題を行っているときに、脳の局所的な活動を測った結果、文法的な間違いを含む文は、スペリングの間違いを含む文よりも強い活動を、大脳皮質の各言語野に引き起こすことが明らかになりました。また、この2条件での皮質活動の差は、ウェルニッケ野や角回・縁上回よりも、ブローカ野の方がはるかに大きかったのです。この事実から、文法の処理は、言語野の活動を一様に高めるのではなく、主としてブローカ野の活動を必要としていることがわかります。


文字を見て文法処理の段階でブローカ野の活動が見られた事はブローカ野は単なる運動を司るだけでなく、少なくとも文法の判断にも関与しており、脳の各部位が連携して作業している事実は確認できます。しかし、英語の音声認識に発音したかどうかの履歴を参照していると言うのは確認できておりません。

人間の音声の発音やリスニングは音素ベースではありません。そのために、日本語でも英語でも話者が発音時に正しい音であったかどうかの確認はできません。相対音感の言語においては音と音の関係で音を認識するために、最初に出す音は自分の調音できる音程内であれば、調音もせずに何の音でも構わないません。それからつづく音の関係だけを保って話していきます。すると話者はその音が常にそれが正しい音であるように調整しながら発話が続いていくだけで、発音できたと言う確認はありませんから、正しい発音ができたどうかは話している本人でも確認する術もないのです。

科学的には発音できたと言う確認方法やその記憶がないので、発音できれば聞き取れる事にはなりません。
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