シャドーイングと音読の非科学性
コスモピア社出版、門田修平氏著書の”シャドーイングと音読の科学”と言う本がその科学性を詳しく説明しています。

著者の門田氏は博士(応用言語学),文学修士,文学士であり、次の学会や協会の会員です。

”International Reading Association,大学英語教育学会,外国語教育メディア学会,全国英語教育学会,関西英語教育学会,ことばの科学研究会,第二言語習得学会,日本音声学会,日本英語音声学会,日本英語学会,日本言語学会,日本言語科学会,英語コーパス学会,日本認知科学会,言語処理学会,日本認知心理学会,日本高次脳機能障害学会,日本心理学会,関西英語英米文学会,日本語教育学会”

専門は心理言語学、応用言語学で、特に第二言語としての英語が、どのようにして知覚・処理され、さらに記憶・学習されるかその心的メカニズムについて研究されております。

しかし、残念ながら”シャドーイングと音読の科学”は記憶や大脳生理学や認知面にかなり詳細な科学的な説明がありますが、その中には非科学的な部分があります。

最大の問題点はメンタル・レキシコン(心内辞書)の参照方法です。門田修平は本の中で人間が音声を聞いて、文字を見て理解できるのはメンタル・レキシコンによるものと説明しており、日本語では心内辞書とか心的辞書とかに訳されています。

門田氏はこのメンタル・レキシコンには大変詳しく、”英語のメンタルレキシコン”の本も書いております。しかし、”シャドーイングと音読の科学”の126Pにはこう書いています。

”視覚提示情報の意味理解は2重アクセスモデル、つまり単語のスペリングを認知すると、一旦それを音韻符号化して音韻表象を形成し、それに基づいて意味表象に到達するルートAと、音韻表象を経由しないで、直接の認識に至るルートBの2ルートを仮定している。

しかし、日本人英語学習者を対象にした英語および日本語漢字に関する実証研究は、基本的には二重アクセスモデルを支持しているものの、「ルートA優先の原則」があることを明らかにしている。”

これは英語の文字を見てメンタル・レキシコンを参照する場合に、視覚情報からダイレクトに意味を理解する場合と、文字を音に変換して音の情報を参照する場合があるが、日本人英語学習者は、文字を見ても自動的に音に変換して音韻情報のデータを参照している、と結論付けているのです。

これが事実であれば、確かに英文をみて音読しても、シャドーイングしても脳の使い方が同じであるから、記憶を促進して学習効果が上がると主張できます。

更に門田氏の大きな矛盾は文字情報のメンタルレキシコンの参照方法として、日本人英語学習者と英語ネイティブは違うとしている点であります。

これは私の長い英語学習の体験から、私は現在は文字を見ても音にして理解していないし、ある程度英語を学ぶと面倒なので、自然と音にしないで英語を理解してしまうものなのです。その方が楽に理解できるからです。

この門田氏が日本人が文字を見て必ず音にして理解している言う判断は正しくありません。

大石晴美氏は”インプットからインテイクへの言語情報処理過程”言語の脳科学的視点より英語教育への応用で音声英語と文字英語の脳の処理を調べております。

この研究の中では日本人の英語初級者や英語堪能者やネイティブの脳の活動を調べています。この研究では次の事が分かりました。その結果は英語の能力レベルにより処理の方法が違うと言うのです。

つまり英語堪能者や英語ネイティブは音声英語と文字英語を脳の領域で言えば、別の処理をしています。文字の視覚情報をあたかも表意文字のようにダイレクに理解しています。音声英語も音をダイレクトに意味を理解しております。

つまり英語の上級者は単語のスペリングを認知すると、一旦それを音韻符号化せず、直接の認識に至っています。つまり音声と文字のメンタルレキシコンを使い分けているのです。

そうなると音読学習の科学的根拠はありません。もちろんシャドーイングも単なる短期記憶にある音情報を連続的に発話しているだけで、記憶が促進され、発音が改善される事もありません。

音読はシャドーイングは正しい発音が身に付いていなければ非常に非効率的であり、危険でもあります。発音は単純に繰り返せば良くなるものでありません。日本語でも発音の良くない人は何年経っても良くなりません。発音をひたすらに繰り返す事を勧める学習方法もありますが、正しい発音が身に付いていないとそれに慣れてしまう危険もあります。

複雑な運動である水泳にしても野球にしてもゴルフにしても正しいフォームは重要です。最近では歩く事さえもフォームが大事だと言われるようになりました。言葉を話すことは日本語でも大変複雑な総合運動であり日本語を苦も無く話せるのは長い訓練と毎日話す事によって可能となります。後から覚える外国語としての英語はさらに多くの問題を抱えています。

Newsweekの日本語版の2007年4月18日号では、音読の目的は「文字と発音を瞬時に結びつけるプロセスを鍛えるため」「単語や文法情報を記憶に内在化させるため」と書いてあります。しかし、日本では人気のある音読も、欧米では、音読は敬遠されているそうです。その理由は、自己流の発音になり、学習のスピードも遅くなるから避けた方が良いとしています。
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