英語発音の多くの誤解

英語発音はアナウンサーのような訓練をさせたり、その他にも誤解されたりしている事が少なくありません。

その一つに日本語は胸式呼吸で発音して英語は息を多く必要とするので腹式呼吸の練習をしなければならないと言う説明を聞きますがこれは正しくありません。腹式呼吸とは横隔膜を動かして息を吸ったり吐いたりすることを言います。胸式は胸を膨らませて息をする方法です。夜寝ている時には人間の横隔膜は自動的に動き息ができます。腹式呼吸とは無意識でもできる簡単な事です。話している時に腹が動くのは横隔膜が動いている事になります。日本語でも横隔膜が常に動いており少し大きな声にすればだれでも腹の動きを感じることができます。日本語の朗読でも腹式呼吸は大事です。歌を歌うときも腹式呼吸は大事です。発声する時は必ず腹式呼吸が必要なのです。私は言語学者ではないのですが言語で腹式呼吸を使わないで話す言語はないと思います。声を出すためには有声音でも無声音でも息を吐く必要があります。息の量を調整しながら意図的に吐くには横隔膜を使う腹式呼吸しかないと思います。ですから英語の発音のためにわざわざ腹式呼吸を習ったり、練習したりするのはおかしなことです。言葉の話せる人は誰でも腹式呼吸ができるのです。

英語の発音でもう一つ言われることが息の量が多いと言われることです。息の量が数倍とか言う人も多いようです。英語のアナウンサーで一息で30ワードくらい話す人は珍しくありません。もし数倍の息が必要であれば膨大な肺活量が必要になります。大量の息を必要とする発音であれば発音方法に問題があります。英語は日本語より特に息の量が多いわけではありません。英語では息の流れの緩急は日本語よりも大きいのですがだからと言って息を非常に多く使う言語ではありません。病気で体が衰弱している人でさえかなり明瞭な英語を話すことは可能です。

日本語は母音が多いので息を声帯で音にする量が多く、息の経済性からみると変換効率の良い言語です。しかし子音で息の止まる時間がないので、日本語の息効率は良いのですが息の流れている時間は英語よりはずっと長くなりその分は息を必要とします。どの言語でも長い歴史を欠けて発音し易いように変化してきましたのである言語が非常に息を多く使う現象はないのではないかと思います。もしある言語で息が大量に必要であればそれは話す事が苦しいことなので苦しくない方向に変化するはずです。音素的には声帯を振動させる母音の方が息を多量に必要とします。日本語のような母音主体の言語は子音主体の英語よりは息を多く必要とするはずです。英語の子音も空気の摩擦音と破裂音ですがしかし空気の流れる量で明瞭になるのではありません。これらの理由から英語の発音のために腹式呼吸を練習するのはまったく意味がありません。

その他の誤解として口の形が重要だと言う教材や学校もあります。口の形を重要視する教え方は既に1901年に出版された伊沢修二の「視話法」でも紹介されている非常に古い方法です。しかし音響的な研究も進み、母音は口の形で無く舌の位置が音の生成に大きな影響を持っており、その位置が母音の種類によって特徴的に推移していることがわかります。我々が母音を聞いて認識できるのは絶対的な音があるのではありません。例えば“ア、イ、ウ、エ、オ”と言う音を人間が認識をできるのはフォルマントの時間的な動きを解析することにより可能になるのです。“ア“と”イ“には違ったフォルマンとがありその動きを解析する事により”ア“とか”イ“の区別がつくのです。これによっても母音の発音に口の形は大きな役割を果たしていない事がわかると思います。英語の音を発音したり、聞いたりする場合は音素単独で聞いては区別ができないので他の音も含めてトレーニングすることは非常に重要になります。

口の形を変えたら発音できないと言う意味ではありません。口の形を変えた方がよりクリアーな発音になる事は事実です。しかし、話す場合に聞き取れるのであればなるべく楽な自然な発音の方が発音し易く、覚え易く、非常に有利なのです。日本語でも通常話す場合と本を朗読する場合とでは口の動きが違います。だからと言って通常の会話が聞き難いものでなく、もし朗読するように話したら不自然で逆に聞き苦しいものです。会話を話す時にはクリアーであればある程良い訳でないのです。英語を話す場合もニュース読みのアナウンサーは口を動かしますが、映画などを見れば通常の会話ではあまり口は動いておりません。

極端な話ですが訓練すれば腹話術のように口を何も使わずに聞き取れる発音ができます。英語でも日本語どちらの言語でも唇で発音する破裂音以外は音を作った後の結果が唇に残るだけだと言う事で口の形がその母音を作っているのではありません。走るときにはほとんどの人は手を振ります。手を速く振る練習だけで速く走れるようになるでしょうか。手の振りも大事ですがどちらが大事かと言えば足の訓練の方が何倍も重要です。速く走るためにはきっと足の訓練をするはずです。足の動きに手が連動しているだけで体を動かしている本体ではありません。唇は発音に関しては重要な役割をしてないと思います。確かに正しい音のまねをすれば通常は口も同じような形にはなります。発音した結果が普通その形になるだけで唇が音を変化させているのではありません。

インターネットで腹話術(Ventriloquism)を調べてみてください。英語でも日本語でも唇を動かさずに十分に聞き取れる発音が可能である事が分かります。どの言語でも腹話術士がいますので言葉の発音に唇はそれ程大きな役割は果たしてないと言うのが私の結論です。目の不自由な方も完璧な日本語や英語を話すことからみても口の動きを目で見ることは正しい発音のためにはほとんど必要ではないようです。音が正しく発音されるのは視覚のフィードバックではなく自分の発音を自分で聞いてそのフィードバックを得て修正をして正しい発音になるのです。

言語の発音は話者が自分の記憶にある音素と照合をしながら話すだけで、話しているときには視覚フィードバックはまったく得ておりません。自分の発音の耳や体から伝わる音をフィードバックとして音を調整していきます。だから口の形を真似るとかビデオを見て発音練習することはあまり意味がありません。自分が話している時には自分の口の形や動きは見る事ができませんので、それを助けに発音練習するのを避けるべきだと思います。その理由が本来は自分の発音を良く聞くべきところなのに口の形や動きにこだわり過ぎ、発音がし難くなったり、音自体が不自然となったりして聞き難くなるからです。音声には快適な音があり、アナウンサーの発音は聞き分けし易い音ではありますが、会話用の発音としては快適な音ではありません。

英語の周波数に関しても誤解があります。英語の周波数が日本語より高いので高周波数音の聞き取りの訓練をすれば英語の聞き取りが容易になるという考えをする教材も多くあります。

機械で音声を測定したからと言っても、それが正しいとは限りません。音声を測定する場合に言語音として、どの周波数成分を聞き手が聞き取り、言語音として認識しているかを理解して周波数測定しないと意味がありません。人間の耳は、言語を聞く際、人間が聞き取れる全ての周波数を平均的に聞いているわけではありません。現在ではまだそれさえ分って無いので言語毎に、どの周波数成分を主に聞き取っているかを理解せずに機械で測定しても無意味になります。

それ以上に周波数測定には致命的な欠点があります。これは、音を全て正弦波の和で表現し、どの正弦波が主に含まれているかを測定し、その正弦波の「周波数」で表現するものです。音の形が正弦波に似ていなければいないほど、この測定法では誤差が出ます。正弦波とは音叉等が出す規則正しい音です。しかし無声子音などの余弦波であるS、K、F、TH、Tなどの音は正弦波で測定すると非常に高い周波数が測定されます。正弦波となじみが悪いため、より周波数の高い正弦波の和で表現しようとするためです。英語の音にはこれらの音は頻繁に現れるため、平均周波数が日本語より英語の方がはるかに高くなるためです。これをもって英語の周波数が高いと言うのは誤りです。

あらゆる音は周波数を持っていますが人間が発する音は大変複雑な波形を示します。声帯が音源である母音も複雑ですが子音は更に複雑で人には聞こえない超音波まで含まれています。例えばささやく声はすべて子音になりますが、いろいろな音のミックスで周波数で計る事はできません。周波数とは周期する数の事で、ある現象が一定の時間をおいて同様に繰り返されるさまを言います。音声認識でいろいろな音を扱うために、よく音声をフーリエ変換して変数を算出しますがあくまでも周波数が一定である各種の音を対象にしております。

すると音声は不規則ですので周波数を計る事はできません。ですから周波数が高いとか低いとかはどの音をどのように計るかにより変わってきます。私は英語と日本語の周波数を計った事はありませんが英語では低い音の方が良く聞こえる傾向にあります。それは口の中で響かせるため低い音の方が口で作ったドーム内での響きは良くなります。例えばプロの声優であれば男子の方が多いと思います。アメリカのボイスセンターコムのテレビのプロモーション用の声優がリストされていますが声優41人中女性はわずか10名しかいません。男女同権の国で25%しかいないのです。アメリカ人も低いと発音を好むのです。それが英語の周波数が低い事になりませんが低い音がポイントであることは間違いありません。

テレビや映画を見ただけでも英語の周波数が高いと言うのは納得できません。個人的な感覚ですが英語と日本語の周波数はそれほど違いが無いように思えますがどちらかと言えば英語の方が低いように感じています。高周波数の音に慣れることにより英語の聞き取りを良くする教材がありますがこのような理由から科学的ではありません。

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