英語の発音記号と実際の発音の違い

音声学的音素が整理され整然とされてきたのは1888年に発音記号が発明されてからです。ですからその歴史は百年ちょっとしか経過していません。つまり音を文字や記号で記述を考えたのは言語の歴史からみればつい最近の事です。発音記号が作られた段階でも音が整理された訳では無いため、苦肉の策として典型的な音を記号でしかし我々が英語を始めると英語と発音記号が同時に入ってきますので、なんとなく英語の発音と発音記号がイコールのように感じてしまいます。

つまり発音記号通りに発音するのが当たり前と思ってしまいます。例えばlittleを辞書で引いてください。全ての辞書にはtの発音記号があります。音声付の辞書でもtをかなりはっきりと発音してあります。しかし現実の会話ではよほどゆっくり話す場合以外はtの音は完全に省略されてしまう場合がほとんどです。通常の運用では聞けないtも辞書では正しい発音を記載せざるを得ません。

英語の発音で辞書に記載された非常に発音記号に拘る人が多くいますが、あまり意味の無いことです。英語の発音は全ての音素が発音記号通りに正しく発音されていませんので、発音記号通りに発音すると大変にギクシャクとした発音になります。印刷物だけで音が無い場合には発音記号だけがたよりですが、既に音を知っている場合にはほとんど意味がありません。

発音英語の現実の発音は辞書通りでない場合も多く、英語を運用する場合においては現実を優先せざるを得ないからです。また同じ音素でも現実の音自体に異音が多数存在しますので、発音記号で表すにしても典型的な音しか記載できません。単語や文章の音源が無い場合は発音記号に準じるしかありませんが、大よその発音しか分かりません。しかし音が聞けるならその音の方が発音記号よりずっと発音が分かり易いのです。もし音源があるならその音を聞いたように発音すべきで、それを発音記号に直すのはナンセンスです。聞いた音をわざわざ発音記号に記述して発音練習するのは間違った練習方法です。水泳の泳ぎ方を練習するためにビデオ画像があるにも関わらず、何枚かの静止画像を参考にして練習するようなものです。

これは人類の言語の歴史を考えれば良く分かります。人類が類人猿から分かれて200万年の歴史があったとすれば、言語が急速に発達したのが1万年くらい前で文字が始まったのがせいぜい3千年前くらい前です。人間の話す言葉の起源は動物のように最初は危険を知らせたり、求愛したりするために始まっているようです。初期の言葉には感情を含んだ表現が多く、音素としてみれば数は少なく、音そのものも曖昧だったに違いありません。危険を知らせるのであれば、コンテキストよりはどれ程感情を伝えるかにあったはずです。

多くの言語が急速に影響し合いながら発達したようですが、どの言語も多くの他の言語の要素を取り入れています。日本語は韓国語や中国語等の強い影響を受けています。英語はラテン語やフランス語やスペイン語などの影響を強く受けています。他の言語から言葉を輸入する場合には最初は原音に近い音ですが、その音も輸入された言語の音に変わる事が多くなります。つまりお互いの言語が作用している時には今からは想像もできないような各種の音が存在して、文字にするのさえも難しい状態であったと思われます。文字の無い時代には、意味が通じ合わせるためにバリエーションのある音が使われ、音素としても無数にあったと思われますが大きな問題ではありませんでした。

文字が使われるようになった後でも他の言語から輸入された音は変化して、言語の音そのものが発音し易いように変化しますので、言葉の音は今でも歴史を引きずりいろいろな音を継承しています。しかし文字が作られ音と文字の一致が試みられ、同じような音を一つの音で表現するようになり、無数の音から有数の文字に落とし込む段階で音の整理がかなり進んだものと思われます。書き文字が発明されてからは便宜上多くの類似の音を一つの文字で表わすようになりました。言葉の発音は歴史とともに多くの変化はしてますが、多くの単語や文章はこれらの変化した音を継承したまま発音されています。従って話す言葉と文字にはかなりの隔たりがあり、文字にするために多くの違う音を便宜上音をまとめているのが日本語であり英語です。

つまり発音器官が作り出す音響的な無数の音に対して、人間が知覚する言語学的なシンボルというものはもう1対1には全然対応せずに、多対多の複雑な対応関係にあります。それを無理やりに同じようなグループに押し込めた音が発音記号と呼ばれているものです。

これらの歴史を知れば、発音記号で音声を記述するのは完全な音の記述ではなく、便宜上の音の表現でしかない事を理解しておくべきです。

発音練習に発音記号や音素を基準にすることは、無数にある音を整理されてしまった音を使いますので数が制限されて覚えやすいのですが、実際の音とはどうしても違ってしまう事は頭に入れておく必要があります。辞書に音声付である場合には音声を聞きましょう。そしてできるのであれば実際に使われている音を聞くようにするのがベストです。英語は聞いたままに発音できるのが理想的です。

幸いにも最近の英語教育ではあまり発音記号を重要視しないようで、発音練習の観点からは好ましい傾向です。

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