英語発音教材のジレンマ

発音を教えていて、多く聞かれるのは「音素の勉強をしていますが、かえって発音がし難くなりました。」と言う事です。発音教材はほとんどが音素と言う発音記号に対応した発音の解説を読ませたりデモを聞かせたりして練習するものです。音素ベースで練習する場合もありますが、普通は単語ベースで練習する場合が多いと思います。その音素を30とか46に分けかなり詳細に説明しています。なぜ音素教材が氾濫するのでしょうか。それは教え易く、説明し易く、納得し易いからです。英語を習い始めには必ず発音記号がでてきますので、どうしても英語の発音と発音記号がまったく同じものであると信じてしまいます。また教える場合も音素が仮に45であるとすれば、その45を説明すれば、この世に存在する全ての英語が発音できるとすれば、それは素晴らしい事です。

しかしどの音素の教材にも後から文章による発音の練習があります。ひどいのは音素の教材と文章の教材を別にして販売しているケースも非常に多く見受けられます。そして実際の文章では発音が崩れるとか、くだけた発音になると説明しています。でも実際には同じ発音記号に幅広い音が存在していますので、実際に使われる音が自然な発音でくだけた訳でも崩した訳でもありません。幅のある音を一つの発音記号で表そうとすることの方が無理があります。その無理のある発音練習をして癖をつけてしまうのは自然な発音をするためには大きな弊害があります。

音素教材の最大の弊害は二つあり、発音を難しくして同時に聞き取りをも難しくさせています。音素教材の提供者はそれでも聞き取りは良くなると主張します。発音の練習は必然的に聞く力を要求しますので、どのような発音練習しても聞き取りが改善されます。だからと言って音素練習が聞き取りや、聞き分けに大変効果的だとは主張できません。発音が良くなっても、なぜ自然な発音の聞き取りに苦労するのかの説明をすべきです。自然な発音をして、自然な発音を聞き取るためには音素の練習をしないで、最初から自然な発音を目指した方が変な癖を付ける時間と、その後で癖を矯正する時間は節約できます。

現実には音素の説明に従い発音すると文章は滑らかな発音になりません。一つ一つの音を明確に発音しようとする学習ですから、はっきりとした音にする事が目的です。日本語で「おはようございます」を一文字毎に音素に忠実にはっきりした発音をしてみてください。通常の発音と比べてみると言葉が明瞭になる事が良くわかります。我々は通常の会話では実際にそれ程音に気にして、はっきりと発音していません。

普通の会話では聞いて分かる範囲内で発音し易い音を選んでいます。実際の発音と発音記号で表現するものは同じではありません。文章を自然に発音しようとすると音素の発音はいい加減にしなくてはなりません。ポイントは音素の発音が重要なのでしょうか、それとも文章の発音が重要なのかです。

人間の発音は日本語でも東北の訛りがあるとか、大変微妙な音まで聞き取れるものです。声を聞いただけで誰の声か分る場合があるほど個性があるものです。その発音に音素の調音方法を具体的に説明するのは発音器官や聴覚に障害がある場合の行うべきものです。


音素を主体とした発音教材を販売しているサイトで「調音方法には従うべきか」の質問があり先生が次のように答えていました。「口の形は、音そのものを出すことよりも、長く続けて話すときに疲れないために工夫されているところが大きいのです。結果として音が出ればよいので、あまり神経質にならないでください。極論すれば、似たような音が出て、Native Speakerを納得させることができれば、音声学の本や理論とは違っていても良いのです。」この先生の音を優先する答えは非常に正しいと思います。私はこれを書いた先生に「またそれなら最初から自然な発音をする練習の方が効果的ではないか。」と質問したところ返事はいただけませんでした。

発音は記述どおりに発音するのでなく、なるべく聞いたままの音に似た音を出す事が発音の本質なのです。そしてNative Speakerを納得させるのでなく、自分が納得できる発音を目指すべきであり、そのためには自分の声を良く聞くべきだと思います。自分の音を探すのが発音練習なのです。

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