英語の発音分析ソフトは使わない


自分で判断しなくても発音診断ソフトでデジタルで判断したらどうかと言うかも知れません。音声学的に言えば、音素を取り出すことができませんので音響的な物理特性は定義できません。日本語でも英語でも「あ」や「A」の音はヘルツでもデシベルでも数値をもっても表現できないのです。音声認識でどのようになっているかは完全に分かっておりません。最近、音声認識は音素ベースではない、フォルマントの時間遷移を感知するくらいのものです。


英語でも日本語でも人間の発音は非常に曖昧でアナログ的なものでその音をデジタル分析や判断はできません。NTTコミュニケーションの柏野牧夫氏はかなり長いことスピーチパーセプションの研究していました。音声認識がうまくいかない理由を次のように説明しています。


「人間の音声認識はまだどうなされているか分からないのでその方法(音素ベース)で音声認識はできない。今までに行われた手法は音を切り出したその音を特定する事。しかし音を切ろうとするとどこがある音の始まりで終りか声紋をとっても分からない。また切り取った音を特定しようとしても音響的な特性は非常に幅が大きい。日本語の“しんぶん”と“しんじゅく”の“ん”は文字ではまったく同じだがまったく違った音響特性がありそれをどうして同じ音として認識するか非常に難しい。」

と言っています。音素の少ない日本語でも音素に区切りそれを特定するのは至難の事で、英語のように音素の多い言語は更に難しくなります。


現在日本語で使われる音声認識は明瞭に読み上げられた言葉を概ね書きおこしができる程度です。英語は破裂音とか摩擦音が多くそれらの音には人間には聞こえない超音波なども含まれますので、英語の音声認識は更に難しくなります。今でもまだ脳が音をどのように認識しているか分かっていません。音声認識の難しさに加え音声分析ソフトはそれをどう判断するかのソフトです。


人間は波形とかデジタルの数値に弱いのでついつい信じたくなります。母音の音声認識はフォルマントの時間的変化を解析して行っており静的なものでなく動的なものです。それをどうやって静的な波形で表現できるのでしょうか。素人にはデジタル的にした方が良いと思われるピアノの調律も訓練を受けた人間の耳で行います。このような理由から英語の発音を波形とかスペクトラムで分析をしながら改善するのはまったく無意味というべきです。

英語の発音は聞くことによりフィードバックを得てより良き音にしていきますのでいくら努力しても自分で聞き分ける音のレベルにしかならないのです。発音を良くするために自分の聞き取り能力を高めるしかないのです。ある発音教材では波形ソフトを使った音声分析をしていますがその際とのBBSで「音声分析ソフトを使い、音の判断は最終的にどうすれば良いか」の質問に「音声分析の波形ソフトは強弱と長短しか表さないので、だいたいの目安として使うことをお奨めします。

最終的には自分の耳が決め手になります。」とアドバイスしています。これは非常に良識的な答えだと思います。最終的に自分の耳が決め手であるのなら、最初から自分の耳を決め手として使い訓練すべきだと思います。

仮に音声をデジタル化して音声分析ソフトを使い波形で判断すると、実はネイティブでさえ指紋のように全部違う波形を描きます。ネイティブでさえ個々に違う波形を自分の波形と比較してどこが悪いかを判断するのは専門家といえども大変困難な事です。通常は機械的に規則正しく動く心電図をみて判断するよりも何倍かの判断力を必要とします。

デジタル機器が正しい判断が可能で、発音が改善され波形でOKと判定されてもどこが良かったのかを知らなければ次の改善ができません。

英語の発音で非常に難しいのはどこが悪いかを知ることで無く、悪いところをどうすれば良い発音になるかが分からないのです。分かっても会話で使えるレベルにするためには、ほとんど無意識でできるところまで練習しなければ意味がありません。偶然に良い発音ができてOKが出ても意味がないのです。意識的に発音を変えたら発音が良くならなければ継続して発音を良くすることができないのです。


2005年8月22日の23時15分から放映のNHK「英語でしゃべらナイト」で山田玲子氏がLとRの判断及び英語の発音レベルのパソコンを使った判定ソフトを公開しました。参加者がLやRのある発音をするとそのソフトが満点を100点として点数をつけるものです。しかし実際には特にLなどは誇張すると合格になるソフトで自然な音には判断は程遠いものでした。このソフトを使ってLやRの練習をすると弊害は良い点を取ろうとして不自然な発音が身に付く事です。我々の理想の発音は機械が合格点を付ける音でなく、言い易くかつ人間が認識できる音なのです。

言葉を認識知るメカニズムが良く理解できないのに、それを人工的に作るのが私は不可能だと思っています。


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